楽曲編成 |
これやこの、行くも帰るもわかれては、知るも知らぬも諸共(もろとも)に、春の遊びぞよねんなき、青柳の糸くりかへし詠めても、猶くれ残る春日かげ、糸ゆうかけて立ちわたる、霞をもれてほのぼのと、桜に匂ふ山鳥の、ながながし日もあかぬ間に、若葉色そふ夏山の、蝉の衣の薄ものに、つつみかねたるしのび音を、誰にもらして時鳥、名は橘のなつかしく、かをりあらそふ空燻の、うちやゆかしき玉簾、千草の露に鳴く虫も、夜寒の床を思ひやり、つづれさせてふ秋の夜に、砧の音さへ澄みわたる、月を夜頃の友として、うちやあかさむ、おもしろや、物の音の物の音の、さえ行く夜半は古枯しも、霙も松におとづれて、颯々の声かぎりなき、四季をりをりの楽しみも、つきせぬ宿こそ久しけれ。
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