楽曲編成 |
寿は峻山にして千歳ひいで、また蒼海のかぎりなき、南の星の影ひたす、岩根の波の名に高き、天の橋立ふみも見ず、みづのえといふみやび男あり、月雪花の折々に、都の手ぶりうとからず、心もかろき春風に、釣棹とつて青柳の、糸くり出す一葉船、かつをつり鯛つりほこり七日迄、家路わすれて住の江や、浦曲はるかにこぎ出でぬ、ああいぶかしや、まさしく釣りしは亀なるを、いとやんごとなき上臈の、をればこぼるる笑のつゆ、初花ざくらに鶯の、初音そへたるばかりなり、われはそもたつの都のものなるが、君をともない申さむ、いざもろともにと浦島は、とこよの国にいたりけり、わだつみの、わだつみの神の宮居のうちのべの、妙なるうちにいつまでも、思いなぎさにうちつれて、貝やひろはむ、玉やひろはむ、君がえにしはむらさきの、深き貝千種貝、たまのあふせはななわだに、思ひとほした女気は、風にみだれぬ玉簾、すだれ貝とのへだてはうしと、くねる目もとのしほ貝は、なでしこ貝のしどけなく、物思ふとは白玉か、何ぞと露のあだ言葉、つい口玉にかけられて、手枕ふれし朝寝髪、たのしき中にふる里を、かつしのばれて立ち帰り、少女があたへし玉くしげ、明けてのどけききさらぎの、花のむしろにまどゐして、寿(くらべ千代くらべ、山にくらべてこの君の、高きよはひを祝しけり。
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