楽曲編成 |
一 祝ひめでたの、嬉しめでたの、マタノヨ若松、枝もイヨ栄ゆる、葉もシ繁る。
二 長の長崎の、永の呂宋の、留守すれば、思ひ出す事は、マタノヨ宵と、宵とイヨ夜中と、暁と。
三 名護屋イヨ山路をノ、肥後に八代、熊本ぢゃ、鳥も通はぬ、マタノヨ山。
四 住めばヤッコラサッサニ、都よノ、我がサ里よ。 四角柱の、四角柱の、マタノンエイソレ角、角のヤッコラサッサニ、ないこそ、添ひヨよけれ。
五 花は咲いても、梅は開いても、マタノンエイソレ花、咲てヤッコラサッサニ、無益の、仇花よ。
六 これが暇の、これが暇の、マタノンエイソレ文、手にはヤッコラサッサニ取らいで、なまなかなかに。
七 山ぢや谷間の、深谷おろしの、木の葉埋りし、柴の庵も、マタノンエイソレなつ、都ヤッコラサッサなれども、旅は憂や。
八 沖に引く汐は、竹に油を、塗るやうに、とろりとろりと、歌うて名乗りて、漕ぐや船方は、エイ上様の、御座船は、マタノンエイソレ艪で、艪ではヤッコラサッサ遣らいでも、歌で遣ろ。
九 お少女少女様は、形の椋鳥の、声は鶯の、しゅくしゃかむくしゃか、さんぱかしんぱか、しんからきうだら、ずばいぼ、眉目の好ござれば、マタノンエイソレ声、声もヤッコラサッサ笑ひも、しなやかに。
十 我が引くならば、山ぢゃ木の根も、萱の寝も、川ぢゃ川柳、里に下りて、道の小草も、田の草も、 人の嫁御も、小娘も、綸子細帯、さらりさっと、巻きあげて、十七七八は、いざや友どちを、寄せや集めて、我が音頭で、鼓太鼓に、唱歌に鞨鼓に、張鼓、けけりゃ、からころ、ひょひゃうららひゅう、ららたっぽぽぽ、エイヤさらさらと、引かばそ、靡きゃるが、マタノウエイソレ引く、引くにヤッコラサッサ靡きゃるも、草のなや。
十一 エイ是より下には、山城川とて、昔由来の、ノサテ川なれば、往けど戻れども、渡りゃしょろしょろ川の、橋のともづり、纜を、くるりくるり、エッくるり、エッくるエッくると、巻きあげて、川下さして、流れ落つる落つる、つるつる落つる、是もご縁かや。下は其の堀川の、マタノウエイソレ深、深きヤッコラサッサ思ひはノ、我独り。
十二 宮へは三里よノ、エイ三里も近さよノ、廿日市の、源左が塗物は、漆は塗らいで、梔子ばかりを、さっと引く、エッソレばっさり、づんでんど、その様なエイソレ、その様な塗物は、只は呉るるとも、俺は嫌々、嫌で候、やがて剥ぐるに。
十三 猿沢の、池の水ではない、鯉が住候、身の上。篠竹の、小篠竹の、窓の嵐に眼が、君もお寝)らず、我も寝ず。 桜木に、鷽が止まりて箏、箏の響に、花が散(ち)る。 人目には、節が切れたが、好い、忍び忍びに、何時までも。
十四 前の月の、二十五日に、定めた庭に、照も曇るも、冬の日の。 山、雪ぢゃいの、麓は霰、里は雨、浦へ廻るも、其様ゆゑ。 沖を漕いで通るは、明石の浦の源太が本船、艪では遣らいで、歌で遣ろ。
十五 一の枝引けば、二の枝靡く、靡けや小松、一の枝、つりりんりん、つりりんりん、つりりりつの、りつりつ、つりりん。
<富筋では第十歌のあと、柳川流では第十一歌のあとに、次の歌が入る>
つるやつるつると、行き過ぎて、行けば右手、戻れば左、今は敵女郎、小んま様とよ、国名を申せば、さて西国の、中ばは奥なる、檜の木音掘の、瓦葺、隣の与太郎兵衛が娘、さても目鼻は好し、甚だ好しノ、眉目振好ござれば、マタノンエイソレ声、声もヤッコラサッサ笑ひも、しなやかな。
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